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三休橋×文化

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最年少が62歳の世界――大阪欄間職人・髙橋さんの矜持

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大阪に、少し不思議な肩書きを持つ職人がいる。

「大阪欄間の最年少職人、62歳」。それが髙橋欄間の髙橋孔明さんだ。

欄間――和室の上部に設けられる装飾的な建具。光や風を通しながら、空間に意匠を与える日本独自の文化である。

大阪では、この欄間づくりの技術が「大阪欄間」として受け継がれ、伝統工芸のひとつとして今日まで続いてきた。

しかし、その担い手は年々減少し、いまや“若手”が60代という現実に直面している。

そんな世界で、いまも木と向き合い続けているのが髙橋さんだ。


その原点は、父の背中にある。

父・髙橋聖峰さんは、和歌山県串本町・潮岬の出身。若い頃は海に潜り、アワビを獲って生計を立てていた。

しかし、嵐が来れば命の危険にさらされ、時にはサメが現れることもある過酷な仕事だった。

「こんな環境でやっていけるなら、どんな仕事でもできる」

そう思い立ち、15歳で大阪へ。義父を頼り、欄間工房に住み込みで弟子入りした。

そこから職人の道を歩み、わずか3年後の18歳で番頭にまで上り詰める。周囲から独立を勧められるほどの腕を持ちながらも、恩義を重んじ、しばらくはその場で技術を磨き続けた。

やがて息子が小学校に上がる頃、「腰を据えるべきだ」と決意し、現在の工房を構えて独立する。

その息子こそが、今の髙橋さんである。

しかし、髙橋さん自身は最初から家業を継ぐつもりだったわけではない。

転機は高校3年生のとき。進路が決まっていないことを担任に繰り返し指摘され、うんざりした末に「家業を継ぐ」と口にしたのがきっかけだった。

後に明かされるが、これは担任の“仕掛け”だった。

高校2年の体育祭で、髙橋さんは負けず嫌いを発揮し、仲間とともに大きな応援旗を制作する。床いっぱいに広げた布に龍の絵を描き上げた。

その完成度を見た担任は、「この子は家業の道に進むべきだ」と確信したという。

ただし、思春期の本人に正面から勧めても反発するだけだ。だからこそ、あえて追い込む形で自ら言わせた。

真意を知ったのは、ずっと後の同窓会の席だった。なお、そのときの応援旗はいまでも担任が大切に保管しているという。

大阪欄間の特徴は、その“懐の深さ”にある。

繊細で洗練された京都の欄間と、力強い奈良の欄間。その中間に位置する大阪は、双方の要素を取り込み、多様なデザインを生み出せる土壌を持つ。

「こんなんできへんやろ?」

そう言われると、「できる」と答えてしまうのが職人の性分だと髙橋さんは笑う。

その気質は父から受け継いだものでもある。父は「鉄以外であれば何でも彫る」という信念で仕事を選ばなかった。

髙橋さんもまた、木製の立体像など、他の職人が尻込みするような難題にも果敢に挑む。そこにあるのは義務ではなく、純粋な楽しさだ。

だが、その技術を継ぐ者はいない。

理由は明確である。かつてのような住み込みの弟子制度は、現代の労働環境では成り立たない。

雇用には保険や各種手続きが必要となり、個人の工房にとっては大きな負担となる。

さらに、継続的に案件を与えられなければ技術は育たない。しかし需要が減少する中で、若手を抱え続ける余力はない。

職人の高齢化が進む一方で、次世代が育たない――それが現実だ。


私たち三休橋地所は、不動産という“箱”を扱う立場にある。

しかし、不動産という“空間”に向き合う中で、強く感じるようになったのが、日本の伝統工芸の存在だ。

今回の髙橋さんとの対話を通して感じたのは、こうした技術や想いに触れる機会が、あまりにも少なくなっているという現実である。

だからこそ私たちは、伝統工芸を守り、未来へつないでいくために、自分たちにできることを考えていきたい。

それは、不動産に活かすこと。

そして、その価値や背景にある物語を、より多くの人に知ってもらうこと。

そうした取り組みの先に、伝統工芸がこれからも息づいていく未来があると信じている。

髙橋さんは穏やかにこう語る。

「こういう仕事があること、どんな想いで作っているのか。知ってもらえるだけで、ほんまにうれしいですね」

静かに、しかし確かに受け継がれてきた手仕事。

その灯を絶やさないために、まずは“知ること”から始めたい。


このたびは、貴重なお話を聞かせていただいた髙橋さんに、心より感謝申し上げます。

現在、三休橋地所では髙橋さんに作品の制作をお願いしています。

伝統の技と想いによって、どのような作品が生まれるのか。完成の日を、心から楽しみにしています。

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